どうしたら子供を「LINEいじめ」から守れるか。加害者にも被害者させないために親ができること

スマホの普及に伴い、年々相談件数が増える「LINEいじめ」。実際に「LINEいじめ」が原因で被害者が自殺してしまうケースも発生しており、スマホを子供に持たせようか考えている親御さんのなかには、不安を抱いている方もいるのではないでしょうか。

そこで今回は、若者を取り巻く問題について専門的にカウンセリング・研究を行う、全国Webカウンセリング協議会で理事長を務める安川雅史氏にインタビューを実施。

子供が「LINEいじめ」の被害者や加害者にならないために、親が事前に知っておくべき「LINEいじめ」の実態と対策についてお話をお伺いしました。

 

<プロフィール>
安川雅史(やすかわ まさし)
全国Webカウンセリング協議会理事長。
北海道にある高等学校で教鞭をとった後、2006年に全国Webカウンセリング協議会理事長に就任。ネットいじめ、不登校、ひきこもり、少年犯罪問題が専門。全国から依頼を受け講演会、研修会を実施している。受講者数は40万人以上。

 年々増える「LINEいじめ」。閉ざされた空間のなかで起きる、その実態とは

――まず、近年の「LINEいじめ」の実態についてお聞かせください。

安川雅史氏(以下、安川):スマホの普及に伴い、全国webカウンセリング協会での「LINEいじめ」の相談件数は年々増えています。2017年8月の相談件数は353件に及び、過去最高となりました。

▲全国Webカウンセリング協議会が「LINEいじめ」について相談を受けた件数。

――具体的には、どれくらいの世代から「LINEいじめ」の相談を受けていますか。

安川:主に、中学生や高校生からの相談が多くなっていますが、小学3年生〜4年生くらいから「LINEいじめ」の相談に来る子はいます。

また、それくらいの学生の子を持つ母親からも、ママ友同士の「LINEいじめ」について相談されることも多いですね。

――これまで、どのような「LINEいじめ」の相談があったのか、教えてください。

安川: 例えば、以前都内に住む中学3年生の女の子から、このような相談を受けたことがあります。

LINEのグループで自分が発言すると、みんなから一斉に無視をされる。他のメンバーが発言すると反応があるのに、自分の発言だけ無視されて別の話題に変わってしまう。また、学校での会話についていけないと思ったら、いつの間にか自分を除いたメンバーでLINEのグループができていて、そこでみんながやりとりいしていた。

LINEには、複数メンバーを集めて会話や通話ができる「LINEグループ」という機能があります。
そのため、
・ LINEグループのグループチャットでいじめ対象の子の発言を無視、もしくは強制的に退会させられる
・ いじめの対象の子を除いたグループで悪口を言われる
などがLINEグループ内で行われることが、「LINEいじめ」の実態です。

――確かに、自分だけが除かれたLINEグループがあると、いろいろ不安になってしまいますね。

安川:いじめの対象の子がいないLINEグループで、いじめの対象の子があくびをしているところや着替えているところを隠し撮りした写真をLINEグループチャットに載せて、みんなで悪口をいう。

LINEグループに入れられていない本人はもちろんその会話を見ることはできませんが、少しずつ周囲の異変に気付き始めるのです。そして、どんどん疑心暗鬼になってしまう。

そのうちに実際の学校生活でも、その友人グループとの空気が気まずくなり、居場所を失ってしまった……というような内容の相談を受けることが多くなっています。

――「LINEいじめ」が発生してしまう背景として、LINEというアプリにはどのような機能の特徴があると考えていますか?

安川:例えば、「既読マークの表示」や「文章上のやり取り」がといったアプリの特徴が挙げられるでしょう。

既読マークがつくと「メッセージを読んでいるのに、返事をしない」とイライラされてしまったり、短文のために真意とは違う意味で捉えられてしまい喧嘩に発展しまったりと、トラブルのきっかけになっている場合が多くあります。

「LINEいじめ」の問題は、このようなやりとりが「閉ざされた空間」のなか、集団で行われてしまうこと。ネット上のやりとりとは違って、大人や学校が監視することはできません。

その中で、子供たちは気に食わない人を対象にした“集団対一人”といういじめの構図ができてしまうのです。

子供を被害者にも加害者にもさせないために。親が取るべき、必要な行動とは

――そのような「閉ざされた空間」のなかで行われる「LINEいじめ」から、どうしたら親は子供を守れますか。

安川:「LINEいじめ」に限らず友人とのトラブル全般に関わることですが、まずは子供の異変に少しでも早く気づいてあげることが重要です。

具体的な対策法として、例えば「スマホを使う場所はリビングだけにして、目の行き届かない場所で使わせない」こと。人は、緊張しているときや怒っているとき、感情を言葉にしなくても表情に出ているものです。

子供が、スマホの画面を見てどのような表情を浮かべているのか。そのわずかなサインにも気付けるために、“親の目が行き届かない場所では使わない”などのルールを設けることが重要です。

――最近では、親もスマホに夢中になってしまっている場合もありますよね。

安川:そうですね。なので、親もきちんと子供との時間を大切にしなければいけません。

子供が帰ってきたら普段と微妙な違いがないか、見逃さないよう向き合うことが重要です。

――もしも子供が「LINEいじめ」に遭っているかも……と気付いた場合、親はどのような行動を起こすべきだと考えていますか。

安川:例えば、学校を休み始めるなどの子供の異変に気付いたら、無理やり話を聞き出そうとしたり、「どうして学校いかないの」と問い詰めたりしてはいけません。

なぜなら、子供が“親に怒られている”と思ってしまうと、「自分が悪いからいけないんだ」と自らを責めることにつながります。そして怒っている親に対して、子供は心を開かなくなるのです。

だからこそ、「お父さんとお母さんは、何があってもあなたのことを守るよ。ひとりで全部抱えちゃだめだからね」と一言伝えて、心の整理ができて話せるようになるまで待ってあげてください。その一言があるだけで、子供は精神的にとても救われるはずです。

――そこで、もし子供から「LINEいじめ」について相談されたら、どのようにして学校や警察に相談をすればいいのでしょうか。

安川:まずは、スマホの画面を画像として保存できる“スクリーンショット”機能で、今までの証拠を残しておきましょう。
また、LINE上だけでなく学校内で物を隠されるなどの被害に遭っていた場合は、その内容を日付と共に細かくまとめておくことも忘れてはいけません。

学校も警察も、証拠を元に動きます。だからこそ、まずは証拠を固めておく。子供の話を聞いて終わりではなく、その内容を証拠として残しておくことが、親に求められていることでしょう。

――では、逆に子供が「LINEいじめ」の加害者にならないために、親として何かできることはありますか。

安川:最近は、テレビでニュースを見ない家庭が増えているそうですが、その問題は子供にも影響を及ぼしています。「LINEいじめ」が自殺につながった事件が発生しても、「ニュースを見ていないから知らなかった」という方が最近多いのです。

子供が成長する過程で、「自分がやられて嫌なことは人にしない」と教えることは大変重要なこと。だからこそ、日頃からニュースを見て、その被害者はどんな思いを抱いていたのか、親子で話し合いの機会を設けるようにしてください。

相手の気持ちを考えられる子になるために、普段から親がそのような働きかけをしていくべきでしょう。

スマホを持たせるなら、子供を守る機能が備わったものを

――子供が被害者や加害者にならないために、親が何をすべきかお伺いしてきましたが、「子供が発する些細なサインに気づく」ことや「日頃からニュースを見て話し合っておく」など、やはり日頃から親子間できちんとコミュニケーションを取っておくことが一番重要なのですね。

安川:そうですね。当然ですが、子供にとって「親から愛されている」と感じるのは幸せなこと。だからこそ「あなたのことが大切だから、守ってあげたい」というメッセージをどれだけ子供に伝えられるか、なのです。

もし「リビング以外でスマホを使っちゃダメ」と子供に伝えたとしても、それは“あなたを守ってあげるためのルール”ということを説明してあげましょう。子供は、愛されている実感があれば親を裏切るようなことはしません。

――スマホは、本来生活を豊かにすることが目的です。しかし、そのスマホによって子供がトラブルに巻き込まれないために、親はどう子供にスマホを与えていくべきですか。

安川:子供の年齢に合わせて、どんな機能が必要なのか見極めるべきです。

例えば、フィルタリングや防犯ブザーなど、特に子供向けのスマホにはさまざまな機能が備わっています。どんな機能を選べば分からない場合は、携帯ショップの店員に聞いて、じっくりと相談して決めるのが良いのではないでしょうか。

親が子供にスマホを与えるということは、その後のトラブルも視野に入れ、しっかりと子供を守ってあげることが重要です。

[編集]サムライト編集部