今では生活必需品になりつつあるスマホ(スマートフォン)。小学生の所有率も増加傾向にあり、小学校への持ち込みに関する対応も変わってきています。基本的な方針を打ち出しているのは文部科学省ですが、これまでは小学校への持ち込みは「原則禁止」でした。しかし、社会の実情に合わせて見直しがかかり、新たな見解が提示されています。その具体的な内容とは? 小学校へのスマホ持ち込みについて説明します。
小学校のスマホ持ち込みは原則禁止?
文部科学省は、小学校へのスマホの持ち込みは、「原則として禁止する」という方針をとっています。たしかにスマホは、今のところ小学校での授業や活動に必要な道具というわけではないかもしれません。また、スマホを所有する児童が増えているとはいうものの、持っていない子もいます。持ち込みを認めると、校内での破損や紛失など、学校側の管理が難しくなるという事情もあるでしょう。
昨今はインターネットやSNSを介したトラブルや事件も多く発生していますから、そういった状況も踏まえると「原則禁止」であることは妥当なところだといえるかもしれません。
一方でわたしたちは、大規模な自然災害や不慮の事故・事件に巻き込まれる可能性を完全にゼロにすることはできません。実際そのような事態が発生していることも事実です。いつも保護者が子供のそばにいられれば安心ですが、学校があるときは必然的に離れ離れなります。地震、通学途中に犯罪などが起きたとき、子供がスマホを持っていれば、速やかに連絡を取ることができます。そのような理由から「小学校へのスマホの持ち込みを認めてほしい」という声があがるようになりました。
そこで文部科学省は有識者会議を開催して見直しを検討し、2020年7月に「原則禁止とはするものの、条件によっては持ち込んでもよしとする」という見解を示しています。具体的な対応は各市町村の教育委員会や学校の判断にゆだねられており、「持ち込み可能」の対応をとった地域もあります。
小学校にスマホ持ち込みが可能な条件
文部科学省が示した小学校にスマホを持参できる条件は、次のようになっています。
まず、保護者に「子供にスマホを持たせたい」という明確な意思と理由があることです。つまり、子供にスマホを持たせることの判断、その管理の方法についての責任を保護者が負うということになります。
理由として認められるのは、「遠距離通学をしている子供の登下校時の安全を確保すること」「公共交通機関を利用して通学をしている子供との緊急連絡手段すること」に加えて、社会的にやむを得ないと判断される事情がある場合となっています。
例えば、都市部で私立小学校に通うとなると、公共交通機関を乗り継ぎながら1時間ほどかけて通学するというケースもみられます。特に通学に慣れない低学年児童の場合、登下校時の安全が気になるというのは保護者としては当然といえるでしょう。大地震が起きたり、事故のニュースを耳にしたりといった場合は、なおさらです。
公立の小学校に通う場合でも、徒歩でかなりの距離を歩かなければならない児童も多くいます。人通りの少ない道を通らざるを得ないこともあるでしょうし、不審者出没などの通報も残念ながら皆無とはいえません。
そこで、上記のような条件を満たした場合につき、小学校へのスマホの持ち込みを認めるということになりました。もちろん、使い方については家族でルールをつくり、校内での使用については学校のルールに従うことも条件となっています。
大阪では小学校のスマホ持ち込みが可能
じつは大阪府では、全国の自治体に先駆けて、小学校へのスマホの持ち込みを容認しています。きっかけは、2018年6月、朝の通勤・通学時間帯に発生した大阪府北部地域を震源とした大規模地震です。登校途中の児童と連絡がとれないことに不安を覚えた保護者などから、小学生のスマホ所持容認に関する声があがりました。そこで大阪府は、災害時や緊急時に児童の安全が確保できるよう登下校時のスマホ所持を認めるというガイドラインを2019年に策定しています。
どのくらいの小学生がスマホを持っているのか?
ところで、実際のところスマホを持っている小学生は、どのくらいいるのでしょうか。
内閣府の「令和元年度 青少年のインターネット利用環境実態調査」によると、「インターネットを利用している」と回答した小学生の約40%が自分専用のスマホを持っているという結果になっています。所持している端末は、一般的なスマホはもちろん、格安SIMのスマホ、キッズ用スマホ、保護者が使用しなくなった古いスマホなどさまざまです。
小学校へのスマホ(スマートフォン)の持ち込みは原則禁止とされていますが、社会情勢に合わせて少しずつ緩和されてきています。スマホ所持に関する学校でのルールに従うことが前提となりますが、これからは小学生でもスマホを所持する生活へとシフトしていきそうです。小学校のお子さまにスマホを持たせる検討をされている方は、ぜひ参考にしてみてください。