オレオレ詐欺は、他人事ではない!犯罪社会心理学から学ぶ“特殊詐欺“に騙されない対策方法

特殊詐欺とは、身内の人物になりすまして金銭を要求してくる“オレオレ詐欺”をはじめ、架空請求詐欺や還付金詐欺まで、直接対面することなく被害者を騙す詐欺の総称です。

メディアでも多く報道されてきましたが、どんなに報道され、注意喚起がされても、被害は減るどころか増えていく一方。

警視庁が発表している2017年1~9月の特殊詐欺被害の認知件数は13,172件、被害額は280.4億円にも及び、多くの人が日々、特殊詐欺に騙されているのが現状です。

では、特殊詐欺を使って人々から金銭を巻き上げる犯人はどんな心理テクニックで、私たちを騙そうとしてくるのでしょうか?

今回は、立正大学心理学部対人・社会心理学科の教授である、西田公昭先生に心理学から分析する犯人の手口についてお話を伺いました。詐欺師が使う心理テクニックを学び、騙されない対策を日頃から練っておきましょう。

 

<プロフィール>
西田 公昭(にしだ きみあき)
立正大学心理学部対人・社会心理学科教授。日本グループ・ダイナミックス学会々長。誰しもが、知らず知らずのうちに詐欺などの被害にあう可能性のある「マインド・コントロール」現象を研究。著書『だましの手口』『マンガでわかる!高齢者詐欺対策マニュアル』など。

 

被害者が詐欺師に騙される心理テクニックとは

——犯人はどういった手口で私たちを騙そうとしてくるのでしょうか?

まず、特殊詐欺の全般に言えることですが、被害者は不安を煽られ、恐怖に陥れられ、パニック寸前まで感情を揺さぶられます。詐欺師は、そのように感情の波風を立たせ、被害者を罠に溺れさせておいてから、救済策を差し出してきます。そうして、被害者が藁をも掴む気持ちでつかんだ救済策が偽物だったという流れが、詐欺師の手口です。

——特殊詐欺というのは、そういった一連の流れの自作自演がしやすいものなんですか?

はい。なかでもオレオレ詐欺は、電話一本で相手を貶めることができるので、捕まるリスクが少なく、犯人にとっては比較的楽に騙しやすい詐欺と言えます。ですから、被害は減らないどころか、増えていく一方なのです。

——しかし、オレオレ詐欺は数年前からニュースで何度も注意喚起がされていますよね。にもかかわらず、なぜ被害者側は騙されてしまうのでしょうか?

そもそも、対策がまだまだ不十分といった原因が挙げられます。人というのは、大抵「自分は大丈夫」という気持ちがあります。自分はそんな危険な目には遭わないし、何かあってもなんとか自分の力で振り払えるだろうと信じています。そういった感情を、心理学の用語では「正常性バイアス」あるいは「非現実的楽観主義」と言います。

また、ニュースの注意喚起などでよく言われている「詐欺に気をつけましょう」「不審な電話には気をつけましょう」というのは、そもそも無茶な話です。なぜなら「気をつけろ」と言うのはわかっていても、具体的に何をしたらいいか分からないからです。

それに会う人会う人すべてを疑ったり、24時間ずっと気をつけるなんてしていられないですよね。特殊詐欺の手口はどんどん巧妙になってきていますし、四六時中人を騙すことを考えている組織に一人の高齢者が勝てるわけもありません。

そもそも、最初からこの人は詐欺師だと分かれば、誰も苦労しません。サングラスをかけて不敵な笑みを浮かべている、よくある詐欺師像のような人なんていないのです。

——では、どうやって特殊詐欺に対抗すればいいのでしょうか?

自分が詐欺師になったのなら、どのような人を使うのか考えてみましょう。詐欺師とバレない人を送り込みますよね。つまり、もしも知らない人から電話がきたとき、“良い人そうな人”こそ、気をつけるべきです。

——電話口でも、物腰柔らかそうな話し方をする人が怪しいわけですね。

はい。次に疑うべき点は、“感情を揺さぶってきた”とき。不安、恐怖、甘い誘惑、責任、罪悪感など…。詐欺師が狙ってくる感情にはいろいろなものがあります。

——たとえば「息子が事故にあった」とかそういった話ですね。

代表的な例ですね。「息子が会社で不祥事を起こした」という不安を煽るものを仕掛けてくるようなものもあります。

また、こうした感情を揺さぶる心理テクニックは、ひとつではなく組み合わせて使われることが多いものです。たとえば、劇場型と呼ばれる何人かの詐欺師が登場するオレオレ詐欺では、息子役以外にも上司役や弁護士役が登場します。上記であげたような不安と合わせて、「息子の会社での不祥事を助けてもらったし…。」と被害者に責任を感じさせたり、相手を裏切っては悪いと言う罪悪感を感じさせたりすることを巧みに話してきます。

——オレオレ詐欺などのニュースを聞くと、どうしてそんな話に騙されてしまうんだろうと感じることがありますが、そういった感情になってしまえば、詐欺師の話を鵜呑みにしてしまうのも理解できます。

そうです。「無下に断れない…。」と言う気持ちを作る。そういった感情とお金が絡めば、すべて詐欺だと考え、疑ったほうがよいでしょう。“感情の揺さぶり”というのはそういうことです。

日々の生活の中にも、詐欺師のテクニックはあふれている!

——では私たちは、実際にどのように自分たちを守ればよいのでしょうか。

「疑う意識」を養うことがひとつ挙げられますね。詐欺師の騙しテクニックに用いられる心理的な影響力は、悪いものでも、特別なものを使ってくるわけでもなく、人の心を動かすうえでは、私たちの普段の生活の中では当たり前のように使われています。

たとえば、スーパーや、テレビショッピングなどでよく聞く「この商品は今しかありませんよ、あと1個ですよ!」と謳う「希少性」。

また、権威のある専門家の名前を出すことで、商品の他とは違う「専門性」を主張したり、テレビで有名だとか「口コミ」を使うことで、社会的コンセンサスのある商品だと装ったりするテクニックもあります。

——そう考えると、詐欺師の手口は特別なものというよりも、本当に身近にたくさんあふれていますね。

はい。人の心理に効果があるからこそ、スーパーやコンビニでも“期間限定”や“好評発売中”といったようなキャッチフレーズを使い、商品を買ってもらえるように工夫をこらしています。こうした公共の場で謳われているキャッチコピーなどの宣伝の多くは、企業の社会的責任から偽装するわけにはいかないため、嘘偽であることは少ないはずです。しかし、電話など相手が見えない場合に、こうした心理テクニックが悪用されます。

人は心理的にこうしたものに弱いので、気をつけなければいけません。

——スーパーやコンビニなどから、犯人の心理テクニックを実際に学ぶことができるわけですね。

そうです。日々の買い物の中でも、何気なく買い物カゴに入れるだけではなく、広告や売り文句を見ては「そのテクニックで買わせに来たか!」とメッセージの裏を見抜き、頭の中で考えるような習慣をつけておきましょう。また、口コミなんかでも、「本当にみんなこの商品を買っているんだろうか?」「そういう風に言われているだけでは無いんだろうか?」と考えるだけでも慎重になるはずです。

普段から意識してどう応対するのかを訓練しておかないと、詐欺師から電話があったときに立ち向かうのは不可能です。防災訓練と同じように、日頃から、買う商品や契約の内容などに慎重になり、相手の手の内を知ろうとする習慣をつけておくことが大切です。

——日々の生活からも詐欺師が使う心理テクニックを知り、覚えておくことが、犯罪防止につながるというわけですね。

警察や消費者庁は、犯人の手口のやり方についてて教えていますが、手口といったものは次から次に出てくるので、自分ができる対策としては応用性がありません。犯人の使ってくる詐欺には、私たちの生活にあふれている心理を上手に利用しているので、手口ではなく心理テクニックを知っておくだけでも、いろいろな詐欺にも応用することができるはずです。

スマホは特殊詐欺防止のツールになる!テレビ電話で詐欺師を撃退しよう

——詐欺師の心理テクニックを知る以外に、何か対策方法はありますか?

「気をつけて」という注意喚起だけでは、詐欺を未然に防ぐための対策としてはまだ不十分です。

もっと根本的な対策には、スマホのテレビ通話がおすすめです。テレビ通話ができるスマホを使えば、オレオレ詐欺なんかの場合は、電話の相手がすぐに息子ではないことが分かりますよね。この対策はセールスマンを撃退するインターホンと同じ対策ですよね。

シニア世代の方は、SkypeやFaceTimeを使って顔が見えるような状態でテレビ電話を普通に使えるようになるだけで、かなり効果的な犯罪防止につながります。

本人の注意や努力ばかりに押し付けるのではなく、技術的に十分対策ができるんですから、存分にテクノロジーを使って未然に防いであげればいいんです。

毎回の電話がテレビ通話だと恥ずかしいという場合は、お金を要求された時だけでもそういった機能を使うようにすれば良いと思いますよ。つまり、自分の顔は見せずとも、お金を要求する側だけが見せるという流儀を日常化すればよいのです。

「自分は大丈夫」なんて思わず、頼れるテクノロジーは最大限に活用しよう

特殊詐欺に立ち向かうには、「自分は大丈夫」と決して思わないこと。詐欺の手口はどんどん巧妙になってきており、見抜くことが難しくなってきています。自分の力だけで立ち向かおうとするのではなく、スマホなどの機械を使って未然に防げる方法を取っておきましょう。西田先生おすすめのテレビ通話と合わせて、TSUTAYAのスマホ「TONE」についている無料サービス「あんしん電話」※を使えば、詐欺被害はさらに防ぐことができるでしょう。

※「あんしん電話」…過去に詐欺電話やセールス電話に使用されたなど危険と思われる電話番号に対し「本当に応答しますか?」と警告表示を出してくれるトーンモバイルのサービス。

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