プロも手口を見抜けない?!どんどん巧妙になる特殊詐欺から身を守る対策を専門家に聞いてみた

特殊詐欺とはターゲットと対面でやりとりするのではなく、電話やメールを使って行う詐欺の総称。オレオレ詐欺や振り込め詐欺なども、特殊詐欺に分類されます。

こうした特殊詐欺の被害者の約8割が60歳以上のシニア世代。日々、詐欺師に狙われている可能性のあるシニア世代やその家族は、特殊詐欺の危険からどのように身を守ればいいのでしょうか?

今回は、シニア消費者見守り倶楽部の岩田美奈子さんに、最近の特殊詐欺の現状とその対策方法について伺いました。どんどん巧妙で悪質になってきている詐欺の手口に騙されないように、ぜひ参考にしてみてください。

 

<プロフィール>
岩田 美奈子(いわた みなこ)
一般社団法人シニア消費者見守り倶楽部、代表理事。シニアの消費者詐欺の防止・解決支援・こころのケアなど、さまざまな活動を行なっている。国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)社会技術研究開発センター(RISTEX)平成29年度採択プロジェクト「高齢者の詐欺被害を防ぐしなやかな地域連携モデルの研究開発」の一環として活動も実施している。

 

警察だって騙される。現在の特殊詐欺の現状とは

——最近の特殊詐欺の現状はどうなっているのでしょうか?

2017年は特殊詐欺がとても多い年で、8月末の時点で、すでに前年の認知件数を超えています。
出典:警視庁による 特殊詐欺 被害件数データ

特殊詐欺被害件数の約8割が60歳以上のシニア世代です。しかし、この特殊詐欺被害の件数は、あくまで警察に認知されているものです。

実際に、警視庁による法務総合研究所(法務省の研究機関)が行った平成24年1月に実施した「第4回犯罪被害者実態(暗数)調査」で過去5年間の「被害申告率」では、「振り込め詐欺」の場合、「届出あり」が35.3%という結果でした。詐欺被害にあっても警察や消費者センターに報告しない方も多いため、実際に分かっている以上に詐欺被害は多いのではないかと言われています。

——シニア世代は詐欺被害にあったと訴えない、という話はよく聞いていたんですが…。

はい。また、これまで多かった「母さん、オレオレ。」といって騙そうとする、いわゆるオレオレ詐欺の手口もどんどん変わってきているんですよ。

——今はどんなタイプの詐欺が多くなってきているんですか?

たとえば、警察官や金融機関を装って「あなたの口座が犯罪に使われています。」といって動揺させ、「すぐにキャッシュカードを変更する必要があるのでこれから取りに行く○○に渡してください。「キャッシュカードを変更するには暗証番号が必要なので教えてください。」といったやりとりを行い、シニア世代の方の口座から現金を引き出す手口が増えています。また、大手百貨店等を装って、「クレジットカードが悪用されているので全国銀行協会に連絡してください。」といって偽りの番号に連絡させカードを入手し利用する手口などもあります。上記の図で言うと、キノコマークがついている黄色い部分になります。

こうした複数の業者が登場する詐欺を“劇場型”と言います。劇場型の詐欺とは、何人かの詐欺師がチームを組み、入れ替わり立ち替わりそれぞれの役を演じることで、消費者を信用させ騙していく手口。以前の詐欺よりも進化してきており、物凄く巧妙で悪質な手口です。

——詐欺なのかどうなのか、区別が本当に難しくなってきているんですね。たしか先日も警察が隣にいたのにもかかわらず、一緒に騙されてしまったと言う事件がありましたよね。

そうですね。プロであるはずの警察でさえ見抜けないほど、巧妙になってきています。

さらに特殊詐欺の恐ろしいところは、お金を取られるだけでなく、その後の家族との関係や生活面・精神面にも影響することです。

たとえば以前、当事者の娘さんからお聞きした話ですが、お母さんが詐欺被害にあいお金を盗まれたということを勇気をもって息子さんに伝えたら、「なんでそんなことを信じるんだ!」とものすごく咎められたそうです。

その一件でうつ的になり、認知症が進み亡くなられたそうです。また被害にあったことをご主人に話せず一人で抱え、経済的損失が大きかったこともあってか自殺を選択してしまった事件も新聞に出ていました。本当に悲しい話です。シニア世代の方は自分を責めたり、家族から怒られると精神的に物凄く参ってしまうために、こうした二次被害が起こってしまいがちです。

——何百万円という金額を盗まれた聞くと、どう対処すれば良いかわからず、思わず怒ってしまう気持ちも理解できるような気がします。周りの人は、特殊詐欺に対してどういった考えでいるべきなのでしょうか?

先ほども言いましたが、今の特殊詐欺は昔とは違い、実に巧妙になってきています。組織で個人を騙しに来るので、シニア世代の方がひとりで太刀打ちするのは、なかなか難しいでしょう。

詐欺に騙されてしまい、本人もショックを受けているところに追い打ちをかけるように家族から怒られてしまえば、ますます落ち込んでしまうものです。

——では具体的に家族はどのように接すればよいのでしょうか?

まずは騙される人が悪いといったようなマイナスイメージを改め、それだけ特殊詐欺は巧妙になってきていることを理解すること。そのうえで、騙されたことを咎めるのではなく「よく話してくれたね。じゃあどうしようか」と一緒に考えてあげてください。早い段階に消費生活センターや警察などの公的機関に相談できれば、解決できることもたくさんあるはずです。

たとえば、銀行に振り込んでしまった場合は、詐欺師が引き出すよりも先に銀行に連絡をすればお金を取り戻すことができます。詐欺にあった場合でも、何かできないかと、まず動くことが大切ですね。

見分けるのはプロだって難しい特殊詐欺は、どうやったら防げる?

——詐欺を未然に防ぐために、どういった対策をすれば良いのでしょうか?詐欺の電話を見分けるポイントなどはありますか?

正直、今の特殊詐欺は巧妙でプロでも見分けることが難しく、見分けるポイントが明確にあるわけではないというのが現状です。しかし、詐欺を未然に防ぐ防衛策というのはいくつかあります。

詐欺師の話をよくよく聞いてみると、おや?と思う箇所があります。簡単な例でいうと、「あなたのクレジトカードが悪用されています」という電話がかかってきても、カードを持っていなければすぐに違うと分かりますよね。まずそもそもの大前提として、警察や公的機関が金銭の話を電話でしてくる、というのは通常は考えにくいことを知っておくべきでしょう。

そして、詐欺の電話がかかってきたとしてもとりあえず電話を切って「誰かに相談する」ことです。本当の話かも、と思ったとしても一旦切って誰かに相談をすることを習慣づけ、徹底して行なってほしいと思います。

いきなり電話がかかってきて、たとえば「事故を起こした」と言われたら、誰でも狼狽するものです。しかも、それが家族だったら。そこでひとりで判断するのではなく、誰かに相談してワンクッション置くことができれば、自分も落ち着いて判断ができるようになるはずです。

また、電話を置いてある場所の近くに、家族や友人の電話番号を書いておいて、すぐに話ができるような体制にしておきましょう。家族に相談し難い場合は、消費者センターとか警察に相談しましょう「188」の消費者ホットラインか「#9110」の警察相談専用窓口に電話すると、詐欺かどうかのアドバイスを聞くことができるので、ぜひ活用してみてください。

固定電話やスマホの設定を、家族がきちんとしてあげることでシニア世代の詐欺被害は防げる

——「誰かに相談する」のが、シニア世代ができるひとつの対策方法だという話を先ほどお聞きしましたが、シニア世代の家族や周りの人ができる対策方法と言うのはないのでしょうか。

オレオレ詐欺対策では、たとえば家族間の連絡ではまず初めに名前を言うなど、家族間で「電話をかけるときには、こういう風にかけるね」と決めておくと良いと思います。そういったルールを作っておけば、そうではない場合に怪しいと思うことができ、オレオレ詐欺なんかは未然に防ぐことができるでしょう。

——見守りネットワークの中でこういった方法で詐欺師を撃退したり引っかからなかったという話はありますか。

電話機に取り付ける自動通話録音機があります。東京都では既に2万台以上を65歳以上の高齢者世帯に無料で貸し出ししています。振り込め詐欺防止のための機械で、これをつけることによって、電話が来た際に「この電話は振り込め詐欺防止のため録音されています。そのまましばらくお待ちください」といったアナウンスが流れます。詐欺師としては、悪いことを録音されるのは困るので電話を切ってしまい門前払いができるというものです。

今年8月に、当社団でこの機械を貸し出している方にアンケートを取ったところ「電話はかかってこなくなった」「この機器のことをもっと広めるべき」という答えが返ってきたので、効果的なひとつの防衛策だと思いますね。

——留守番電話にするだけでも詐欺被害が減るという話もよく聞きます。

そうですね。まずお金がかからず手軽に始められる方法ですし、留守番電話をつけるのも効果的だと思います。ただ、留守電にしても出てしまう場合や社会活動を抑止してしまうというデメリットもあります。

あとは、電話回線の会社に月いくらか払うとできるナンバーディスプレイサービスで相手の番号が表示されます。スマホは設定をしなくても、すぐに番号が分かるのでいいですね。いちどその番号が変な電話だとわかれば拒否設定もできます。

ですが、スマホや固定電話でも、使い慣れていないシニア世代はそういった機械の設定は難しい場合がありますので、家族や周りの人が代わりに行なってあげる必要があります。

特殊詐欺対策もスマホでお手軽に

電話がかかってくる度に気をつけて対応するのも、なんだか疲れてしまうもの。ましてや、巧妙な手口で騙してくる現在の特殊詐欺の手口を前に、“気をつける”だけでは、十分な対策とはいえません。

岩田さんがおすすめする“振り込め詐欺防止の機械”は、無料で貸し出しを行っていますが、台数に制限があったり全ての自治体が行っているわけではないので確認が必要です。
TSUTAYAのスマホ「TONE」は、こうした特殊詐欺を未然に防ぐ無料の機能がついています。また、特殊詐欺を撃退するための機能やアプリの設定方法を、電話サポートや店舗での対面で相談でき教えてもらえるので、経験豊富なオペレーターにしっかりと設定をしてもらいましょう。