【第2回】深刻な状態になる前に・・子どものネット依存のサインに気づくには
ネット依存、スマホ使いすぎ
schedule 2024年04月25日
スマホを持つのは当たりまえになった現代において、
お子様のスマホの使いすぎが気になっていませんか?
全6回にわたり、スマホ使いすぎの専門心理師森山沙耶先生に「スマホ使いすぎ」をテーマにお話しいただく企画、第2回目はお子様のネット依存のサインについてお伺いしました。
この記事でわかること
- ネット依存のサインはどのようなものがあるの?
- ネット依存のサインに気づいたときどうする?
ネット・ゲーム依存予防回復支援MIRA-i(ミライ)所長
ネット依存専門心理師
森山 沙耶
臨床心理士・公認心理師。ネット・ゲーム依存予防回復支援MIRA-i(ミライ)所長。特定非営利活動法人ASK認定 依存予防教育アドバイザー。 ネット・ゲーム依存を専門に当事者やその家族に向けて認知行動療法に基づく心理カウンセリングを行うとともに全国の学校、自治体、企業等を対象に予防啓発のための講演・研修の講師としても活動。
子どものネット依存が深刻な問題になっています。中学生を対象にした調査では9%がネット依存の状態にあるということが報告されました(1)。12歳〜15歳を対象にした別の調査では、重度のネット依存は4.3%であり、さらに26.3%に依存傾向の可能性があることを示しています(2)。つまり4人に1人は依存的な使用をしているかもしれないのです。
ネット依存は、インターネットの使用をコントロールすることができず、心身の健康や現実の生活で問題が生じてもやめたくてもやめられない状態です。深刻なネット依存は、不登校、昼夜逆転、引きこもり、うつ状態などと関連し、子どもの成長・発達に大きな影響を与えると言われており、深刻な状態に至る前に早めの段階で気づくことが大切になります。
引用文献
(1)Nakayama et al. (2020). Relationship between problematic Internet use and age at initial weekly Internet use. Journal of Behavioral Addictions,9(1), 129-139.
(2)Kawabe et al. (2021). Article association between internet addiction and application usage among junior high school students: A field survey. International Journal of Environmental Research and Public Health, 18(9), 4844.
ネット依存のサインはどのようなものがあるの?
イギリスの心理学者であるGriffiths氏が示した依存のサイン(3)を参考にネット依存に気づくための思考や行動の特徴を紹介します。
【とらわれ】ネットがその人の生活の中で最も重要な行動となり、思考、感情、行動を支配するようになる
例:・ゲームをしていなくても、ゲームのことをいつも考えてしまう。
・ネットのために食事や入浴の時間さえも惜しむようになる。
【気分修正】気分をよくするための「自己治療」としてネットを利用する
例:
・不安が強いときにスマホを見ることで気持ちを和らげる。
・むしゃくしゃした気持ちをゲームで発散させる。
【耐性】以前と同じ効果を得るために必要なネット使用が増えていくこと
例:
・以前は1〜2時間で満足していたが、何時間もやらないと満足感が得られなくなる。
・高揚感を感じるために、より刺激の強いゲームをするようになる。
【離脱症状】ネットをやめたり、急に減らしたときに生じる不快な感覚(不機嫌やイライラなど)や身体的影響(不眠、食欲不振など)
例:
・ゲームができない状況になると、イライラし、家族にも当たる。
・スマホを禁止されたときに、無気力になり他の活動をしなくなってしまう。
【葛藤】周囲の人との葛藤あるいは、自身の中で減らしたくても減らせない心理的な葛藤
例:
・ネットを続けることで他の活動に支障が出てきて、家族との言い争いが増える。
・ネットを減らした方がよいと頭ではわかっていても、減らせないことで落ち込む。
【再発】以前のパターンに戻ることが繰り返される。ネットをやめたり、コントロールできるようになっても、すぐに元に戻ってしまう傾向
例:
・一定の期間ゲームを減らすことができても、ふとしたきっかけで元に戻ってしまう。
・ゲームを完全にやめたが、少しやり始めただけで以前のやり過ぎている状態に戻る。
引用文献
(3)Griffiths, M. (2005). A 'components' model of addiction within a biopsychosocial framework. Journal of Substance Use, 10(4), 191–197.
ネット依存のサインに気づいたときどうする?
依存症について本人自らが問題に気づいて、相談をするということはごくまれです。特に子どもの場合はなおさら難しさがあります。その際、家族や周囲の大人がネットやスマホの使いすぎを指摘したり、時間を減らすよう強制したりしても、家族関係が悪化し、より一層本人の態度がかたくなになってしまいます。
もし家族がサインに気づいたときは、本人に叱責や説教、注意を重ねるのではなく、まずは家族自身が相談や受診に繋がることから始めてみてください。多くの場合、家族は自分の育て方に問題があったのではないかと自身を責めたり、今後のことに不安や心配を募らせていたり、とても苦しい気持ちを抱えています。家族自身がケアを受けたり、相談したりすることで、子どもに対する向き合い方も良い方向に変わり、子どもが相談につながる可能性も高まります。
まとめ
- ネット依存が深刻になると子どもの成長や発達に大きな影響をあたえる
- ネット依存には特有のサインがある
- ネット依存に気づいたら叱るのではなく、まずはお気軽に相談を
質問回答コーナー
前回のコラム記事で質問箱へ投稿いただいた内容へ答えます。
中学2年生の子を持つ親です。子どもがスマホルールを守らないときはどのように関わればよいですか?
森山心理師
頭ごなしに叱るのはNG!ルールを守れないのは、お子さまの意思が弱いからでも悪い子だからでもありません。
作ったルールの何かがうまくいって可能性があると考え、お子さまと一緒に改善点を探ってみてください。
例えば、ルールが分かりにくい、複雑すぎる、あいまいすぎるという場合もあれば、今のお子さまには難しすぎたかもしれません。
ルールの難易度が高い場合はまずは少し頑張れば守れるルールに下げてみるのもアリです。
また、ルールを守っても、お子さま自身がメリットを感じられない場合、なかなか継続するのは難しいものです。
最初は「いくつできたら週末は好きなゲームを多めにできる/好きな場所に出かける」などちょっとしたご褒美を設定してもよいと思います。
小学校高学年(5年生)の子を持つ親ですが、スマホゲームは一般的に1日何時間程度だと、子供も納得し、依存のリスクからも低くなるなどあるのでしょうか。
森山心理師
スマホゲームは家庭用ゲーム機でのゲームと比べて、いつでもどこでも手軽にでき、ガチャなどハマる要素も多くあるため、依存のリスクは高いと言えます。ですので、1日に遊ぶ時間を決めておくのは大切です。
しかし、何時間程度であればリスクが低くなるかというのは研究でも十分に明らかになっていないため、
子どもと一緒に1日のスケジュールを確認し、他の活動に支障をきたさない時間数を話し合ってみてください。
トーンモバイルでは匿名で森山心理師へ質問できる質問箱を受け付けております。
ぜひちょっとした疑問でもご質問箱へ投稿ください。
- ご質問の数が多い場合、数の多いご質問やTONE会員の方を質問に優先的に回答させていただきますので、すべてのご質問に対しての回答や、期限を定めた回答をお約束するものではありません。
- ご質問の回答は、次回以降のコラムにて回答させていただきます。